【Web編集論】第6回『東京R不動産』吉里裕也さんに聞く!

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斬新な不動産情報サイトとして注目を集め、現在ではグループサイト全体で月間450万PVを集める「東京R不動産」。そのディレクターを務める吉里裕也さんに、物件情報を編集し、ユーザーとマッチングさせていく魅力を伺います。

プロフィール

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吉里裕也 よしざとひろや

株式会社スピーク共同代表。1972年京都府生まれ。東京都立大学工学研究科建築学専攻修了。株式会社スペースデザインを経て、2003年に「東京R不動産」を立ち上げ。不動産・建築・デザイン・マーケティングなどを包括的に扱うディレクターとして活動している。

●従来にはなかった検索軸の提案


これまでの不動産情報サイトは、「間取り」「築何年か」「駅から何分か」というスペックからの条件検索が主流でした。だけど、東京R不動産は「レトロな味わい」「眺望GOOD」「倉庫っぽい」といった、物件の雰囲気、個性から絞り込みをかけていくスタイルです。

この形を採用したのは、我々の欲しかったものがこれまでの不動産情報サイトになかったから。オフィスや住宅を探そうというときに、不動産屋に薦められるのは「駅から近い」「築年数が浅い」「南向きでフローリング」といったものばかりです。もちろん、一般的にはすごく魅力的な要素であるのは確かなのですが、私たちのように、「倉庫っぽい」「レトロな味わい」に惹かれる人もいます。

完璧な物件というものはありません。自分の中の嗜好やウェイトによって、好みの物件は決まってくるものです。それがスペックだけでくくられていいのでしょうか? 家やオフィスが画一的になることへ一石を投じるべく、東京R不動産は新しい「物件の見せ方」を提案しました。

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●ユーザーと物件のマッチングから選択肢が広がる


「外見がこんなにボロかったら、誰も借りてくれるわけがない」と考えている大家さんはたくさんいました。しかし、「外が少々ボロくても、好きなように中を改装できるのなら、ぜひ借りたい!」と思っている人も多いんです。そんな両者を我々がマッチングさせることで、お互いの選択肢を増やせるのではないかと考えたのです。

東京R不動産をスタートさせた当時、東京の不動産業界は「2003年問題」に揺れていました。これは、都心にビジネスビルが次々新築され、オフィステナントの供給が過剰になり、古い中小ビルの空き室が増えるのではないか、という問題です。ちょぅどこの問題から、ビルのオーナーたちが神経質になっていたんです。実績もない我々の提案がオーナーたちに受け容れられたのは、こういった背景もあったんです。

●カオスから生まれる出合い


東京R不動産の編集には、「物件情報の並び順を意図的にカオスにする」という指針があります。これは、極端にいうなら、「家賃5万円の古びた一軒家の賃貸の下に売買物件の1億円のマンションを置く」というような並びをあえて作っているということです。また、エリアや路線ごとに物件を探す機能も備えていません。


「高円寺の賃貸に引っ越そうかな」と考える人は、中央線の隣駅の中野、阿佐ヶ谷あたりも視野に入れて考えるものでしょう。その場合、路線別検索やエリア検索は確かに便利です。それができない東京R不動産を使うと、どうなるでしょうか?

高円寺の物件を探していたのに、その下にある三軒茶屋の賃貸に惹かれてしまったり、売買物件に着目して「同じ高円寺でローンを計算すると、物件購入もありなんじゃないか」と考えたりするユーザーが出てくるわけです。実際、「考えていたのとはまったく違うエリアに引っ越した」というユーザーは多いですね。路線やエリアの縦割りでは到底出合えなかった物件に巡り合うことから、思わぬ物語を派生させる。それが、東京R不動産の編集方針なのです。

●営業マンが物件情報のテキストをつづる


個々の物件の紹介ページも、従来の不動産情報サイトとは一線を画しています。たとえば「~アウターなどもかけられるクローゼットになっています。荷物の多い僕としてはこれくらい収納があるとうれしいところ。~これ、嫌いな人はいないんじゃないでしょうか」と、雑誌の記事やコラムのようなトーンで書くようにしていますね。

物件探しから、物件情報のライティング、そして実際の物件案内、契約を結ぶまで。一人の営業が、ほぼすべてのプロセスを担当しています。

営業マンが物件紹介のテキストを書くわけですが、「こう書くべし」というガイドラインを用意しているわけではありません。意識させるのは「ユーザーがイメージしやすいよう、写真もテキストも考えて構成する」くらいですね。新人の営業マンでも、アーカイブを参考にしつつ、自然と東京R不動産のテイストを身につけていくようです。

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●上海R不動産へ、そして新たな展開


現在、東京R不動産のほかに、房総R不動産、大阪R不動産、福岡R不動産などの横展開をはじめ、マニアックなショップ「密売東京」、リノベーションサービスをカタログ化した「R不動産 toolbox」など、グループサイト全体で月間のページビューは450万ぐらいになっています。しかし、これはただ拡大路線を取ってきたわけではありません。

10年近く運営してきましたが、我々は常に新しく、そして面白いメンバーと仕事をすることを第一義としてやってきました。どんなコンテンツも、どんな組織も動きがなければ閉塞感が生まれてしまいます。オープンにしてどんどん新しいことを仕掛けていかないと、やっている我々もユーザーも面白くないでしょう。今後は、海外展開も目指しています。具体的には、上海R不動産の設立ですね。

●面白い物件がなければバズることはない


今、情報サイトを運営するのなら、ソーシャルメディアとの連動も無視できないでしょう。だけど、うちは意外にローテクな人間ばかりで。TwitterやFacebookとの連動もまだまだですね。昨年スタートした大阪R不動産から、やっとツイートボタンやいいね!ボタンが付くようになったぐらいですし。

ソーシャルメディアを通して情報を広げていくのは、手法の問題です。すぐにでも取り入れられるでしょう。ただ、我々が気になるのは、掲載に足る物件があるかどうかです。面白い物件がなければ、どうやってもバズることはない。物件が第一の魅力であることが大切。どれだけ新しい打ち手や編集の方法論を考えても、東京R不動産は結局そこに立ち返るんです。

▼関連リンク
RealTokyoEstate-東京R不動産-


(佐々木正孝 +ノオト

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ネットで話題のWebサイトや人物を“編集”という切り口でインタビュー! Webならではの編集論から、これからのネット社会のゆく先々を探ります。

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