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【大河原克行のキーマンウォッチ】AWSジャパン・長崎忠雄社長が語る、日本企業の課題解決のためにAWSが支援できることとは? – クラウド Watch


 アマゾンウェブサービスジャパン合同会社(以下、AWSジャパン)の長崎忠雄社長は、日本企業のクラウド活用の遅れやDXの遅れに危機感を募らせる。

 「コロナ禍においては、クラウド活用が進展したものの、トランスフォーメーションにまで至らず、コスト削減にとどまった企業が多かった」と警鐘を鳴らす。そうしたなかで、DX推進、ミッションクリティカルシステムのモダナイズ、デジタル人材の育成といった日本の企業が直面する課題の解決を支援するのがAWSジャパンの役割だとあらためて訴求する。そして、日本を活性化するには、スタートアップ企業の成長を支援することも大切だと語る。

 AWSジャパンの長崎社長に日本における最新の取り組みを聞くとともに、同席したAWSジャパン スタートアップ事業開発部の畑浩史本部長にも、AWSジャパンが取り組むスタートアップ企業支援の取り組みについて語ってもらった。

アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 長崎忠雄社長

日本企業においてDXへの取り組みが遅れている理由は?

――世界の企業に比べて、日本企業のDXへの取り組み遅れているという指摘が多くあります。なにが原因なのでしょうか。

長崎: 確かに、日本の企業は、米国の企業に比べてクラウドの利活用が遅れており、その結果、DXへの取り組みが遅れているのは明らかです。しかも、昨今の調査では、アジア全体のなかでも日本の遅れが顕著になっています。コロナ禍で、社会環境やビジネス環境が大きく変化し、自ら変わらなくてはいけないのにも関わらず、日本の企業の場合は、コスト削減に走る傾向が強く見られました。

 もちろん、アジアや米国の企業にとっても、コロナ禍ではコスト削減は重要な要素でした。しかし、それ以上に、やり方を変えたり、お客さまのターゲットを変えたりといったところに、デジタルやクラウドを活用するケースが多く見られました。ここで、日本の企業はさらに差をつけられたという危機感があります。

 クラウドは、仕事のやり方、ビジネスの在り方を180°変えるお手伝いができます。従来のトラディショナルのやり方ではない方法だからこそ、それが実現できるのです。ただ単にクラウドを導入しただけでは駄目です。リフト&シフトすれば、コストは安くなります。しかし、本来の目的は事業構造を変えることであり、そこまでいかないと、クラウドの本当の恩恵が受けられません。日本の企業はそこにまで到達していないというのが実情です。

――その理由はなんでしょうか。

長崎: 背景のひとつには、日本の企業が持つ文化があります。リスクが取りにくい文化があり、新しいことをやっても成果が出るのに時間がかかったり、仮に成果が出たとしても、評価されにくかったりする風土があります。日本は減点主義の文化であり、また、人材の流動性が低く、長年勤務した人たちが多いため、どうしても保守的な状況に陥りやすい傾向があります。クラウドの導入に関しても、時間をかけて慎重に検討することが多く、決まると途端に動きが速くなるという日本の企業が持つ特有の傾向も、こうした文化が影響していると考えています。

 いまは先行きが読みにくい時代です。そうした時代は、石橋をたたくように、慎重にやっても答えは出てきません。新たな事業への取り組みや、企業のトランスフォーメーションは、いかに速く動いて、トライ&エラーを繰り返し、それによって確度を高めることが大切です。何十回も、何百回も挑戦し、そのなかから数個の成功モデルが生まれることになります。日本の大手企業の多くは、かつての成功体験に縛られて、そこから抜け出せない、新たなところにシフトできないといった状況に陥っています。これは、人が育たないという課題にもつながっています。新しいことに挑戦する機会が少ないということは、人が育つ環境が少ないことにつながるからです。

 しかしその一方で、日本の企業には好奇心を持った人たちが多いと思っています。そういう人たちに、クラウドに関するトレーニングを行い、リスキリングを行うことで、好奇心の「火種」を大きくするための支援を行いたいと考えています。

 企業の文化を変えるという取り組みは大変です。まずは、それに向けて、やり方を変えていくことが第一歩となります。そのために、クラウドを提供し、さまざまなツールを提供し、トレーニングという観点からも支援することが、AWSジャパンが日本の企業に最も貢献できる部分だといえます。

 気づきやヒントを与えて、最初は部門単位などの小さなことからはじめて、成功したものを徐々に広げていくという流れを作ることが大切です。そして、その際には、経営トップも参画しなくてはなりません。新たなことをやろうとすると、必ず阻止しようとする動きが社内に出てきます。

 クラウドはイノベーションそのものです。スピード、アジリティを実現し、ガバナンス、コンプライアンス、セキュリティ、オペレーティングモデルの次元を変えることができます。クラウドによって、スモールスタートができ、頻繁に試行錯誤を繰り返すことができ、これがイノベーションにつなげることになります。

クラウドの真価はイノベーションにあり

テクノロジーを提供することだけがAWSの役割ではない

――AWSジャパンが貢献できる部分は、クラウドというテクノロジーやサービスの提供ですか。

長崎: AWSはテクノロジーカンパニーではありますが、テクノロジーを提供することだけが役割ではありません。AWSジャパンでは、200以上のテクノロジー、ソリューション、サービスを提供しています。しかし、私は社員に対して「サービスを売るのが仕事ではない」と話をしています。お客さまのイノベーションをサポートするために、AWSのサービスを使ってもらうことが仕事の第一歩であり、むしろ、大事なのはそこから先です。クラウドは、売って終わりではありません。使いはじめてから、一緒に並走していくことが重要であり、それこそがお客さまを成功に導く近道だと思っています。

 例えば、AWSジャパンが無償で提供しているデジタルイノベーションプログラム(DIP)は、Amazonが社内で行っていることを数日間のハンズオンを通じて体験してもらい、変革のメカニズムを知ってもらう内容になっています。いわば、テクノロジーとはまったく関係がないプログラムであり、顧客中心とはどういうことか、Amazonではそれをどう実践しているのかといった手法を提示するものになります。DIPの参加者からは、「本当の顧客中心のやり方とはどういうものかに気づいた」、「DIPに参加して以降、物の考え方や開発の仕方、議論の仕方が大きく変わった」という声をもらっています。

デジタルイノベーションプログラム(DIP)

 またこれまでは、社内でDXを推進するといった場合に、大手企業ではまず、コンサルティング会社に声をかけるということが一般的でした。しかし、それではコストや時間がかかり、DXに迅速に取り組めないという課題が生まれていました。AWSジャパンは、コンサルティング会社との連携を進める一方で、プロフェッショナルサービスチームを社内に持ち、同時に、AWSが世界中のお客さまに対して事業モデルの変革のお手伝いしてきた経験も蓄積しています。こうした観点からも支援できる体制が整っているのです。ここでも、「AWSがこんなことをやってくれるとは思わなかった」という声をいただいています。

 AWSジャパンは、お客さまを成功に導くためには、どんな提案が必要なのかということを理解し、企業風土変革や人材育成、クラウド活用のためのトレーニングなどを提供してきました。

 実は、私の仕事のほとんどは、テクノロジーの話ではなく、企業風土をどうするのか、経営変革をどうするのかといったことを、お客さまと一緒になって考えることです。技術トレンドをとらえ、事業と技術をどうつなげればいいのかということを真剣に考えている経営者は、私に対して、さまざまな質問を投げてきます。その一方で、テクノロジーのことはわからないからとか、テクノロジーは担当役員や部下に任せているという経営者が舵取りをしている企業は、動きが格段に遅いという傾向が出ています。

 DXは、経営トップのコミットがないと動きません。AWSがグローバルでお付き合いがある企業を見ても、経営トップがコミットしている企業は、とにかく動きが速く、マネージャーや社員にも迷いがなくなるため、考え方や動き方が組織の末端まで浸透しやすいという特徴があります。

 AWSがやっていることは、テクノロジーやソリューションを提供するだけではなく、お客さまの成功を考え、それに向けて、まじめに、実直に、徹底的に支援を行うことです。私は、「詰め将棋」といっているのですが(笑)、企業が持つ課題をひとつひとつ解決していくことがAWSジャパンの役割であり、これこそがAWSジャパンの強みだといえます。

お客さまの企業風土が変わっていくきっかけづくりを支援したい

――日本の企業ではデジタル人材の不足が大きな課題となっています。AWSジャパンでは、2022年4月からデジタル人材育成包括支援プログラム「AWS Skills Guild」をスタートしています。反響はどうですか。

長崎: デジタル人材の育成という話は多くの企業から聞くようになりましたが、これを経営トップがコミットして取り組んでいる企業は極めて少ないのが実態です。一方で、AWS Skills Guildは、単に教育プログラムを提供するのではなく、トップがコミットメントし、どれぐらいの期間でトレーニングを実施し、それまでにどれだけのデジタル人材を、どこまで育成するのを決めます。それを実行するためには、組織のビジョンや方向性といったものが大切になりますし、社内に学び続ける文化を醸成する必要があります。

 経営トップがコミットすることで、人材育成を仕組みづくりだけにとどめるのではなく、実効性があるものにし、組織のさまざまなレイヤーの人たちを巻き込み、具体的な成果につなげることを狙っています。クラウド導入もそうですが、トップがコミットしないと前には進みません。AWS Skills Guildも、トップを巻き込むことを重視しています。

AWS Skills Guild

 AWSジャパンでは、これまでにも人材育成のためのプログラムを、パッケージ化して提供してきた経緯がありますが、AWS Skills Guildは、これをよりわかりやすくし、無償で利用できるプログラムとして提供することになります。2022年4月にAWS Skills Guildの提供を開始して以降、数多くの問い合わせをいただいています。すでに、数百人単位でトレーニングを実施している企業もあります。年末ぐらいになれば、これらの成果を具体的にお話しできると思っています。

 AWS Skills Guildのゴールは、企業がトランスフォーメーションをしっかりできたかどうか、ということになります。これまでにも、新規事業を創出するために、クラウドを使いこなしたい、人材を育成したいという要望に対応したり、出島のような組織を作り、自由な発想をもとに新事業を創出する支援した例もあります。その姿勢は、AWS Skills Guild でも変わりません。AWSジャパンは、イネーブラーやカタリストになりたいと考えており、お客さまの企業風土が変わっていくきっかけづくりを支援したいと考えています。

スタートアップは創業時から最も重要な顧客セグメントのひとつ

――AWSは創業時から、スタートアップ企業の支援に力を注いでいます。これはなぜですか。

長崎: 理由は簡単です。なにかを変えたい、なにかをやりたい、変革したい、社会にインパクトを与えたいという人たちに成功をしてもらいたいと考えているからです。これまでにもそうした意志を持つ世界中の人たちに、AWSはクラウドサービスを提供してきました。UberやLyft、Airbnbなどがその最たる例であり、数年前にはなかった企業が、クラウドを活用することで、それぞれの業界において大きな変革をもたらしました。

 そして、AWS自らもスタートアップとしてはじまった企業です。AWSにとっては、スタートアップ企業を支援することは当然のことであり、創業時から最も重要なお客さまセグメントのひとつにスタートアップ企業を位置づけています。

畑: 実際、AWSジャパンも、スタートアップ企業とともに日本で成長をしてきました。当初はゲーム開発企業の利用が中心でしたが、スタートアップのエコシステムの拡大とともに、アドテック、メディア、EC、クラウドソーシング、フィンテック、SaaSと、さまざまな企業がAWSを活用しています。多くのスタートアップ企業のCEOやエンジニアと話をし、どんなことを求めているのかを理解し、そこに対してAWSはどんな点で貢献できるのかということを検討し続けてきました。

AWSはなぜスタートアップを支援するのか?

AWS Japan Startup Userのトレンド

 2013年以降、支援策をひとつずつ増やし、現在では10の支援策を用意しています。最大10万ドル分の無料クレジットを提供する「AWS Activate」、構成レビューや構築アドバイスを行う「技術支援」、AWSのサービスに関する情報や最新技術動向を提供する「勉強会/コミュニティ」、イベントへの登壇や公式サイトへの掲載などによる「マーケティング支援」、無料コワーキングスペースを提供する「AWS Startup Loft Tokyo」、金融やヘルスケアなどの各業界が持つ特有の規制にも対応する「業界特化型支援」、マネジメントや採用、評価などの相談に応じる「元CTOメンタリング」、AWSユーザーとのマッチングを行う「Connections」、Amazonグループとの協業を推進する「One Amazon」、パートナー企業やVCなどを紹介する「パートナー紹介」といった支援策です。

 また私自身も起業の経験があり、AWSジャパン社内にもスタートアップ企業経験者が多く在籍しているため、経験に基づいたアドバイスも可能です。スタートアップ企業に寄り添った支援ができる体制が整っています。

AWS 10のスタートアップ支援プログラム

 さらに、長年にわたってCTOのコミュニティ支援も行っており、情報交換を行ったり、それらの声をもとにした支援強化を行ったりするなど、一朝一夕にはできない蓄積をもとにした支援も大きな特徴です。また、CTOコミュニティイベントの「CTO Night and Day」は、2014年からスタートした日本独自の取り組みで、コロナ前は100人以上のCTOが対面で情報交換する場となっていました。2020年、2021年はオンラインで開催しています。このCTO of the yearは、CTOによるピッチイベントであり、CTOたちで審査して、年間優秀CTOを決めるというユニークな取り組みになっています。これはCTOのプレゼンスを高めるための取り組みのひとつであり、日本独自のイベントです。

CTO Night and Day

長崎: スタートアップ企業のCTOによるコミュニティづくりに最初に着目したのは、日本のチームでした。CTOやテクノロジー部門のトップに焦点をあてたコミュニティを作り、AWSジャパンがハブになって、CTO同士の情報交換を行い、悩みを聞き、そこから人材育成の課題、事業をスケールする際に注意しなくてはならない点、直面する壁の超え方などを共有しています。また、世界中のスタートアップ企業のネットワークを生かした課題解決支援も行っています。CTOコミュニティを作ることが、日本のスタートアップ企業をもっと元気にできるというのが私の判断です。AWSのテクノロジーやソリューションを徹底的に使い倒してくれるのがスタートアップ企業のCTOです。テクノロジーやソリューションを進化させるには、重要なパートナーであり、大きな財産です。競合がやっているから追いかけたというものではなく、AWSが先行して作り上げた仕組みであり、AWSの文化そのものです。

畑: いまでは大手IT企業各社が、スタートアップ企業の支援を開始したり、検討したりといったことを行っていますが、その際には、「なぜ、スタートアップ企業の支援をするのか」というところから議論が始まると聞きます。AWSには、そもそも、そうした議論がありません。スタートアップ企業を支援するのは当たり前のことであり、議論のスタートは、「どう支援するのか」というところから始まっています。

 スタートアップ企業のCEOだけでなく、技術的意思決定を行うCTOとの連携を深めることで、より正しく、深く、AWSを理解してもらえるようになります。企業が大きくなると組織も階層化しますが、スタートアップ企業がミドルステージに入るまでは、技術的意思決定のほぼすべてをCTOが行います。そうした人たちに、AWSが持つサービスやソリューションをより知ってもらい、それをクイックにビジネスに生かすことができる環境が、必要だと考えています。だからこそ、AWSジャパンはスタートアップのCTOの支援にフォーカスしているのです。

アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 スタートアップ事業開発部の畑浩史本部長

――2022年7月からは、新たに「Startup CTO Dojo」を開始しました。この狙いはなんですか。

Startup CTO Dojo

畑: Dojo(道場)というと日本独自の取り組みのように聞こえるかもしれませんが(笑)、これはグローバルでの取り組みをもとに、日本市場向けにカスタマイズしたものです。海外では、CTO Fellowshipという名称で展開していますが、日本では、Fellowshipというとアカデミックな印象が強いため、独自にDojoという名称を採用しています。

 スタートアップ企業のすそ野が広がるなかで、エンジニアとしての経験はあっても、経営に関わった経験がないというCTOが増えてきました。そうした変化をとらえ、AWSが持つ経験や知見をもとに、スタートアップ企業のCTOをより広く支援をしたいと考えました。スタートアップ企業に求められるのはスピードです。そこにCTOが果たす役割は大きなものですが、経験がないために回り道をしてしまったり、どんな課題があるのかを知らずに困難にぶつかったりして、結果としてスピードが遅くなるという場合があります。

 Startup CTO Dojoでは、創業3年目までのスタートアップ企業を対象に、AWSジャパンの知見を共有し、コミュニティを通じて、CTOをサポートする体制をとります。

Startup CTO Dojoの参加者要件

 具体的には、技術面からは、スタートアップ企業がシード期に押さえるべき技術課題などを共有します。データベースの設計についても、これをやっておけば、スケールしたときに苦労をしないで済むという方法がありますし、セキュリティに関しても、ここまでの対策は最低限やっておいた方がいいものや、データ解析をしたいと思ったときにデータが蓄積されていないといったことがないように、準備をしておくことも大切です。途中からやろうとすると、大変だというケースもあります。こうした、スタートアップ企業がつまずきやすい技術的課題を挙げ、それぞれの企業が置かれたステージにやっておくべきことを共有することになります。

 また非技術面では、経営の一角を担う立場として、エンジニアの採用や企業カルチャーの設計などについて学ぶことができます。ここでは、AWSジャパンの起業経験者や、ゲストスピーカーを交えてセッションを行い、一方的な座学にとどまらず、インタラクティブな内容にしたり、ゲストスピーカーに自由に質問できるようにしたりといった構成にしています。AWSの創業者であるジェフ・ベゾスが取り組んできたカルチャーづくりのノウハウも提供していきます。

 2022年7月にスタートしたStartup CTO Dojoの参加者が1期生となり、同じタイミングで創業したCTOが横のつながりを持ち、同じステージで成長しながら、お互いに悩みを共有し、課題を解決していく姿を描いています。さらに、来年の2期生ともつながったり、2014年から進めているCTOコミュニティとの連携も図ったりといったことも想定しています。Startup CTO Dojoで学んだ人たちが育ち、5年後にあの経験があったから、いまがあると言ってもらえるようになるといいですね(笑)。

2022年上期の注力ポイントは?

――AWSジャパンの事業成長に向けて、2022年上期はどんな点に注力してきましたか。

長崎: 2022年上期は、ウィズコロナやアフターコロナを見据えて、お客さまが本格的にDXに取り組みはじめたといえます。AWS Skills Guildに対する関心が高まっていることからもそれが裏づけられます。

 また、メインフレームをはじめとしたミッションクリティカルシステムのマイグレーションが増加しています。イノベーションの取り組みや、未来に対する投資を考えた場合に、重たいシステムをどうモダナイズしていくべきかという話が活発になっています。

 AWSジャパンでは、2022年春から、AWS Mainframe Modernizationを提供し、ミッションクリティカルシステムのマイグレーションを支援しています。ただ、AWS Mainframe Modernizationはツールにすぎません。大切なのは、パートナーとともに、メインフレームを何年かけて、どのようにマイグレーションしていくのかといったプランニングを行うことであり、それを推進する実行体制の構築です。

 海外ではメインフレームをクラウド上に移行したという事例もありますが、日本の企業には、まだ石橋をたたいて渡るような慎重さがあります。しかし、今後数十年間にわたって、これまでと同様に、メインフレームを運用、管理していくことに疑問を持ちはじめている企業が増えているのは確かです。富士通がメインフレームからの撤退を発表したことも、さまざまな企業がメインフレームについてあらためて考えるきっかけになっていることを感じます。移行するかどうかは別にして、議論が活性化しているのは確かですね。

AWS Mainframe Modernization

 クラウドのメリットはスピード、アジリティに加えて、セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンスであり、事業部門側は、それらのメリットを生かして、クラウドへの移行を促進しています。これが進めば進むほど、基幹システムもクラウド化した方が、親和性が格段に高まり、経営のスピードも高まることになります。

 ただ、業界ごとにミッションクリティカルシステムの意味や役割、重要性が異なりますから、製造、金融、通信など、それぞれの業界にあわせた形で、ミッションクリティカルシステムをモダナイズしたり、クラウドに移行したりすることで、なにがメリットになるのかということをしっかりと提案していく必要があります。

 グローバルでも業種に特化したサービスを提供したり、業界の専門知識を持った人材をそろえたりといったことを行っていますが、これはAWSジャパンも同様です。今後も、業界に深く入り込んだソリューションを提供していく考えです。

 例えば、自動車産業は、心臓部となるエンジンの作り方から変わっていく、大きな変化のなかにあります。ヘルスケアではデジタル化の大きな波が訪れていますし、日本の金融分野のお客さまはクラウドに対する高い感度を持って企業の変革を進めています。製造業では、コロナ禍において、サプライチェーン全体に関わる変革が重要なテーマになっており、そこにクラウドの活用は避けて通れません。

ITトランスフォーメーションパッケージ 2.0の狙い

――大規模システムの移行を実現するためのクラウド移行支援プログラム「ITトランスフォーメーションパッケージ(ITX)」は、2022年3月から、ITX2.0へとバージョンアップしましたが、この狙いはなんですか。

長崎: ITXは、マイグレーションプロジェクトを評価フェーズ、準備フェーズ、移行フェーズに分け、各種サービスを提供してきました。しかし、過去1年間の取り組みを通じてお客さまと対話していると、一部に足りない部分があることがわかりました。その部分を追加する形でメジャーバージョンアップしたのがITX2.0となります。準備フェーズにおいて、専任CSM(Customer Solutions Manager)によるCCoE(Cloud Center of Excellence)の立ち上げ、プロジェクト規模に応じたトレーニング計画の立案、IT DivestによるIT機器の買い取りや撤去、リサイクル、環境に配慮した廃棄を可能にしました。準備段階での穴がなくなり、マイグレーションプロジェクトがスムーズに推進し、移行フェーズに入れるようになりました。

 実は、ITXも、日本が先行して実施しているプログラムで、日本のお客さまの声をもとに作ったものとなっています。ITXは、今後もバージョンアップをしていきます。お客さまが求めているものがあれば、それを次々と反映し、よりよいものにしていきたいと考えています。ただ、これを3.0や4.0と呼ぶかはわかりません(笑)。

ITトランスフォーメーションパッケージ 2.0

――日本では、昨年秋にガバメントクラウドにおけるAWSの採用が決定しました。また、先ごろ、ビックカメラがミッションクリティカルシステムにAWSを採用することを発表するなど、AWSの存在感が増しています。

長崎: お客さまがなにかやろうとしたときに、サービスのラインアップ、スケールアップの可能性、強固なセキュリティ、これまでの実績をもとにした安心感や信頼性などの観点でAWSを選択するケースが増えています。AWSジャパンにとっては、公共分野も小売業も重点業種のひとつであり、これからも力を注いでいきます。

 AWSの立場から見ると、アマゾン(Amazon.co.jp)は重要な顧客の1社です。eコマースにおいて、日々多くのトランザクションに対応しなくてはなりませんし、長年にわたって、厳しい要望があり、それに対して改善を加え、進化を遂げてきた実績があります。言い換えれば、小売業において最も厳しい要求をする企業に対応し、そこで実績をあげてきたのがAWSであり、それと同じ仕組みを小売業のお客さまに提供できるという強みがあります。

 7月には、Amazon Prime Day 2022が行われましたが、私自身、一人の消費者として、クリックひとつで買い物ができる楽しみを満喫してはいるのですが、AWSジャパンの社長としては、それをしっかりと支えないといけませんから、楽しんでばかりはいられないというのが本音ですね(笑)。

――AWSジャパンは、2022年下期にはどんな点に力を入れますか。

長崎: その点では、上期に取り組んできたものと変化はありません。お客さまのDX支援、ミッションクリティカルシステムのマイグレーション、そしてデジタル人材育成支援などが重点テーマとなります。基本的には、半年ごと、1年ごといった単位で戦略を区切っているわけではありせんし、AWSジャパンのミッションは、AWSのテクノロジーや力によって、日本のお客さまのイノベーションを支援し、トランスフォーメーションを実現することに変わりはありません。それを実現するために、継続的な取り組みを行っていきます。特に、マイグレーションに関する問い合わせが増加していますので、それをスムーズに実行するために、お客さまと並走し、お手伝いをしていくことに力を入れたいと考えています。

――円安の影響で、ドル建てで契約している場合には、クラウドの利用コストが高まるといった影響が出ています。この点について、AWSジャパンではなにか対応を考えていますか。

長崎: いまは円安の局面にありますが、過去の歴史を見ると、円高の局面があったことも事実です。こうした変化する為替をロックした形で設定することが正しいことなのか、あるいはお客さまが望んでいることなのか。そうしたことを、お客さまとの対話を重ねながら、ベストな方法はなにかを模索しています。これまでのAWSの歴史を見ても、値上げをしたことはありません。日本円で契約しているお客さまに対しても値上げするということは考えていません。むしろ、AWSはずっと値下げを行ってきた経緯があります。

 ただ、想定以上の急激な円安は、結果として、お客さまの使用料金が高くなるという状況を招いているのは事実です。お客さまとの対話を通じて、契約内容に無駄がないのか、もっと安くするためにはどうしたらいいのか、といった提案活動は継続的に行っています。こうした活動を通じて、円安の局面であっても、お客さまにとって、最適なコストになるように努力をしていきます。





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