パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局はこの数週間、インフレ退治のための利上げには「痛み」を伴うと警告している。20、21両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合後に公表する最新の四半期経済予測では、将来の失業率見通しの大幅な上方修正といった具体的な数字で、そうした痛みを明示することになると考えられる。
米金融当局は今回、3会合連続となる0.75ポイント利上げを決めると見込まれている。その場合、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は2008年の金融危機の前以来、目にすることのなかった水準にまで引き上げられることになる。引き締めの次の局面は一段と大きなリスクを伴い、最新の経済予測にも恐らく反映されるだろう。
Fed’s Projections for Unemployment Rate Set to Rise Again
Officials see higher unemployment as necessary cost of inflation fight
Sources: Federal Reserve Board of Governors, Bloomberg.
6月の前回予測以降、インフレ率にはほとんど鈍化が見られず、当局者は引き締めにさらに積極的な姿勢となっている。失業率とインフレ率との関係を巡る過去の推計についても懐疑的な見方を強めており、そのことも当局者が経済活動のさらなる減速に傾いている一因であると想定される。
ドイチェ・バンク・セキュリティーズの米国担当シニアエコノミスト、ブレット・ライアン氏は「金利の軌道が引き上げられれば、失業率に一層大きな影響があるのは確かだ。新たな四半期予測で失業率見通しが4.5%近くに上方修正されると見込まれる」と指摘。「当局者は引き続きソフトランディング(軟着陸)シナリオを掲げるだろうが、リセッション(景気後退)の高いリスクを意味することになるだろう」と話した。
6月の経済予測中央値では、失業率が2024年末までに4.1%に悪化すると予想されていた。一方、それ以降に発表された毎月の消費者物価指数(CPI)統計は失望すべき数値で、今月13日に発表された8月のCPIは前年同月比8.3%上昇と引き続き高い伸びとなった。
パウエル議長ら当局者は利上げに絡んだ警告を強めている。議長は8月26日のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)での講演で、「家計や企業に多少の痛みをもたらす」ことになるとして、「インフレ抑制の残念なコスト」だと説明した経緯がある。
8月の失業率は3.7%で、600万人が失業して活発に職探している計算だった。労働力人口に変化がないと想定した場合、4.5%への失業率悪化は約130万人分の新たな失業に相当する。
Fed Yet to Raise Estimates of Long-Run Unemployment Rate
Higher estimates would show rising sway of job postings in policy debate
Sources: US Department of Labor, Federal Reserve Board of Governors, Bloomberg.
原題:
Fed Set to Reveal ‘Pain’ Coming in Next Stage of Inflation Fight(抜粋)